ハローこんにちは。
尾宅野リッカです。
電車で通勤中、車内の壁に貼ってある広告にて「死」に関する本が紹介されていました。
その本を買ったわけではありませんが、その本の情報をネットで辿っていくうちに、関連書籍としてこんな本に出会いました。
実はその時、叔母が正に子宮癌で治療を受けている最中だったので「死とは?病気とは?」と、答えのないものを考え込んでいた矢先でした。
だからでしょうか、自然と興味を持ってその場で電子書籍バージョンを即買いでした。
今回はこの本を一気に読みきった上での感想を語ります。
(今は五体満足である私がこの本の書評をすること自体が不謹慎かもしれません。読む人によっては「軽率」と感じられる表現もあるかもしれませんが、ご了承下さい)
Contents
もしも一年後、この世にいないとしたら。はどんな本?
本をめくると1ページ目にこのような言葉が書かれています。
僕が死を考えるのは、死ぬためじゃない。生きるためなんだ
こうおっしゃるのは、アンドレ・マルローさん。フランスの作家さんです。
恐らく、著者の清水研さんにとって座右の銘のような言葉なんだと思います。
清水さんは国立がん研究センター中央病院の精神腫瘍(しゅよう)科長として勤務されている方です。このご職業を分かりやすく言うと、癌にかかられた患者様とそのご家族の方々を対象とした精神科医だそう。
この本は、清水さんがお仕事を通して沢山の癌患者の方々の人生に触れ、ご自身が学ばれたことが書き綴られた書籍です。
古今東西問わず、恐怖や不幸の象徴として忌み嫌われている「死」を扱われている本ですが、始めに言っておきます。
暗い本ではありませんよ!
むしろ、「死があるからこそ人はこう生きるべきなんだ」というヒントをくださり、すごく前向きになれるような本です。
私の経験を通して、「がんを体験された方の物語から学ぶことで、自分の人生の羅針盤が定まりうること」をお伝えできるのではないかと考え、書かせていただきます。
こんな方に読んでほしい
- 「人生とは?」と考える機会が増えた方
- 「毎日が同じ」と感じている方
- 仕事や勉強に追われて頭でっかちになっている方
この本の内容と自分が考えたことを少しだけご紹介
がん患者の方々との時間の共有に基づいて著者の人生論が生まれるまで
主に前半の章に、癌にかかられた患者様たちの実例が書かれています。
中には、仕事が軌道に乗ってきて勉強にも人一倍意気込んでいた働き盛りの20代で発症された方もいます。
そのような方々の比ではありませんが、実は私にも壮絶な過去があります。人が当たり前に持っているものを2つ同時に失いました。自分が未来のために努力してきたことが一瞬で消えました。
「どうして私だけがこんな目に」
「低確率の不幸クジがなんで私に当たったの・・・」
このような絶望は一応経験している身であります。精神疾病になり、体重が30キロ代まで落ち、まともに動けなくなりました。
何の前触れもなく自分だけに降ってきた理不尽さ。私は悪いことはしていないのに、どうして。この怒りと悲しみをどこにぶつけていいのか分からない。誰を憎んだらいいのか分からない。苦しい。
清水さんはこんな私の何百倍もの苦痛を抱えている癌患者様たちの臨床経験を積み重ねていく過程で、このようなことに気づかれます。
人は悩みと向き合う力(レジリエンス)を持っている
レジリエンスとは「壮大な喪失を受け入れて新たな現実と向き合う力」だそうです。
人は心を持つ限り、大きく落ち込んでも柳のようにゆっくりしなやかに起き上がる力があるのだとか。
そして厳しい現実と向き合った際に、しっかりと落ち込むこと・悲しむことこそが重要なんだそう。
怒りや悲しみという感情を経て、失ったものに少しずつ向き合えるようになります
負の感情に蓋をすることは無意味。これは精神疾病を経験したことのある私にもよく分かりました。
清水さんの精神科医としての立場から得られたこのような数々の発見を経て、様々な段階を踏んでいく中で、彼の思想が形づいていくわけです。
健康に生きていることに感謝
平凡な毎日を当たり前に送れていることに感謝すべき。ということが書かれています。
子宮癌に罹った50代の叔母は私にこう言いました。
「健康に対して感謝しなさい」
この言葉を聞いたとき、私はすぐにそんな気にはなれませんでした。
「健康」についての意識をすっかり忘れていた自分がたまらなく恥ずかしいと思ったからです。
平日は会社で仕事をして、帰宅後においしいご飯を食べる。休日は好きなこと(主に秋葉原でオタク活動)をしてストレス発散をする。
こんな日常を送れているのは、自分が働けるほど健康だから。
また、私をサポートしつつ仕事を与えてくださる上司たちも健康だから。
昼休憩に美味しいお料理で私のお腹が満たしてくれるシェフも健康だから。
一時は精神疾病で寝込んで動けなくなった私が今は社会復帰できたのは、精神科医の方が健康だから。
自分はたくさんの「健康である人」に支えられているから、健全な日々を過ごせているんですね。
健康な日常・・・
こういう毎日がいつか失われるかもしれないと思うと、とってもいとおしく思えてくるわけです。
書籍にこんな引用文が書かれていました。古代ローマ人のメメント・モリさんの言葉だそうです。
世界中の方々に伝えてみたい言葉だと密かに思っています。
今やりたいことを後回しにしない!
must(~しなければ)よりもwant(~したい)を優先しすぎるのは人生を粗末にしているのと一緒。
ということが書かれていいます。
「must」とは例えば社会的な枠組みや他人からの評価。
日本人って真面目な方が多いので、プライベートを犠牲にしてまでも仕事に勢力を注いでしまう傾向にあると思うんですね。これ自覚してない方が多い。
私も実は根が真面目なので昔はついつい休日にも勉強をしてしまう体質だったのですが、それは良くないことだなぁ~と、この本を読んで痛感しました。
毎日やることさえきちんとやっていれば、mustよりもwantを堂々と優先しちゃっていいんですよ。
繁忙期や試験が過ぎればやりたいことを一気にやっちゃっていいんですよ。
実は昔、2浪を経て医学部に合格した高校の同級生が在学中に学業で無理をしすぎて亡くなったというお知らせを受けたことがあります。私は彼女とは特に親しい間柄ではありませんでしたが、亡くなったことを聞いてから数日間は気が落ち込んで力が出ませんでした。
私は素直な「こうしたい」という自分の気持ちをずっと押し込めて窮屈に成長した
このような方も多いのではないでしょうか。
wantを優先する勇気が出ない真面目な方は、「死」を人生の終着点と考えてみれば良いのだとか。
それは悪く言えばこじつけですけど、こじつけも大事ですよ!うん、大事!!
「休日も最低1時間は勉強か仕事をしないと落ち着かない」と自分を縛っていた私はこの本に感銘(?)を受け、年末年始はmustを全て忘れて本能のままに過ごしました。
好きな本を読みあさり、前から行きたいと思っていた場所に出かけて、美味しいものを食べて、1年以上会っていなかった友達と夜まで飲んで、すごくスッキリしましたよ。
時にはこういうのも重要なんです。
と意気込める、いい循環が出来ましたよ。
最後に、この本を読んだ上でのまとめ
この書評をまとめるのに何日もかかってしまった・・・。まあなんというか、読むことによって「心の洗礼」を受けた感じでしたね。
この一冊をまとめ上げるまでは著者の清水さんご自身も心苦しかったことが多かったと思います。なぜならば、精神面に係わるお仕事は患者様に具体的な解決策をしづらいがゆえに凄く辛いご職業だと私は知っていますので。
清水さんがおっしゃる通り、「死」というフィナーレは必ず訪れるものだから、思い切り充実した人生を送るべきですよ!
やりたいことを先延ばしにすることこそが究極の怠惰。そんなことを気づかせてくれるような一冊でした。
林修三さんの「今でしょ!」ってすごくいい言葉ですよね。ちょっとお笑いじみた格言ですけど、これはmustだけでなくwantにも大きく当てはまる。
そう考えると気が楽になりますよ。
あと、毎日聴いている歌のこんな歌詞がますます好きになりました。ご紹介しましょう。
後悔なんてぜったい 君には似合わない
輝きたい衝動に 素直でいよう
子宮がんに罹った叔母は、手術を受けながら順調に回復してきていて、現在は職場復帰もしたそうです。
本人はあまり落ち込んでいないようですし、この調子で元気になってくれればと思います。
自分が死んだときに周囲の方々から「精一杯生きたね」と思ってもらえるような人生を歩んでいければ最高ですよね(くさいセリフ)
それでは、ごきげんよう。