ハローこんにちは。
尾宅野リッカです。
本日は、宮部みゆき著の有名作「理由」をご紹介します。
読んだ感想をひとことで言うならば、
誰かに「変わったミステリー読んじゃったヨ~!!」ってついマウント(?)を取りたくなる作品です!
(※1 “現代”とは言いましても、1990年代の作品です。でも読むと確かに新しさは感じます)
この小説の何がどう変わっているのかと言うと、主にこの2点です。
- 「誰が殺されたのが分からない」という驚きの初期設定
- 構成が関係者のインタビュー形式
事件の謎解きに伴ってバブル崩壊後の社会情勢の闇を学べるのも、作品の面白ポイントになっています。
↑白表紙のものは朝日文庫バージョンで、私が購入したものは新潮文庫バージョンです。中身は同じです。
では、語らせて頂きますね!!
Contents
「理由」ってどんなストーリーの作品ですの?
1999年に直木賞に選ばれた有名作品なので、タイトルは誰もが一度は聞いたことがあると思います。
東京都荒川区の高級マンションの一室で起こった、一家4人殺人事件をめぐる物語です。
物語の序章に出てくる前置きはこうです。
事件はなぜ起こったのか。
殺されたのは「誰」で、「誰」が殺人者であったのか。
そして、事件の前には何があり、後には何が残ったのか。
って普通は思いますが、実はそうではなく、いつの間にか住人が入れ替わっていたのです(゚Д゚;)
死んだ4人の正体はなかなか複雑で(なんと家族でもなかった!)、物語の最後の方でようやく明かされていきます。
(一般的なミステリー作品って被害者の身元が分かっている上で推理・検証が始まっていくものなのに、珍しいですよね!)
じゃあ元々部屋に住んでいた一家はどこで何してたんだよって話ですし、しかも犯人じゃない人が逃走しているという、非常に「?」な事態になっています。
この事件で何が起こったのかを関係者のインタビューをもとに紐解いていくため、明確な主人公はいません。
登場人物にカッコイイ名探偵は出てこないし、推理っぽい推理も無いです😲
しかも、殺人事件が起こった部屋には実は「不動産競売」のよからぬ裏事情が絡んでいて・・・(後述)。
もはや気になるところだらけですよね!?
私の友達も何人かハマっておススメしていた作品なのです(≧▽≦)✨
この作品の見どころや心に残ったところを感想と共にご紹介
ネタバレ最小限でいきますね( • ̀ω•́ )✧
登場人物数は100人超え!!
事件後に地道に関係者に当たっていってインタビューしていくのですが、出てくる人数はインタビューされた方々の家族合わせて100人以上という!!
(そもそもインタビューしてるの誰やねん?マスコミ?って最初なりますけど、途中で素性がチラッと出てきます)
物語は、ドキュメンタリー番組風に繰り広げられていきます。
一見すると少し回りくどい手法を取ってるようですが、幾人もの主観で構成されているっていうのが物語のミソです。
マスコミで散々悪く書き立てられたAさん(仮名)までインタビューで出てきます。
その時はしっかりしとした感じで証言していたので「Aさん案外まともじゃん。話も筋が通ってるし」と思ったのですが、そのずっと後の章で実はAさんは妄想でしゃべっていたと判明して、「あー!騙された!」と思いました😲
事件発生は東京都荒川区なのに取材対象がいきなり埼玉県深谷市の住人に飛んだり(!)して、1つの事件にこんなに多種多様な人が絡み合っているのか~ってしみじみ思います。
事件解明を深めるために、インタビューする人の「身の上話」も取り上げて書かれているので、それなりにページ数は多いです(朝日文庫バージョンは630ページ、新潮文庫バージョンは800ページ!)
インタビューする人の細かな感情や仕草の描写もすごく鮮明で、本当にその人が目の前にいるように思えてきます✨
ただ、重要参考人の息子(または弟)が聡明っていうパターンが多くて少しキャラカブリしたのが唯一の残念点でした。
ちなみに膨大な登場人物の中でサイコパスは5人、ボーダーラインは2人だけです(←あくまでも個人の見方です)
「家族とは何か?」を考えさせられる
膨大な登場人物に伴って色々な家族が出てきますが、そのほとんどが問題を抱えています。
借金がかさんで離婚寸前の家族、嫁姑問題が深刻化している家族、進路で揉めてひびが入ったままの家族、夫が蒸発した家族、18歳のシングルマザーのいる家族・・・。
物語中で問題解決した家族は特にいません。それでも毎日は過ぎ去っていくので、どこか悲しさや淋しさが残ります。
また、私はマンションの住人のこんな言葉に衝撃を受けました。
親のことだって、便利な給料配達人と、住み込みのお手伝いさんぐらいにしか思ってないんだものね。
↑幼い頃の自分に言い聞かせてやりたい・・・。
最後に犯人の幽霊目撃情報(多分ガセ)が出てきますが、その幽霊の存在そのものが「家族とは何か?」という問いかけを残しているように思えます。
バブル崩壊後の不動産の社会問題も知ることができる
「何でマンションの殺人事件に社会問題なんて出てくるの?」ってちょっと思いますよね。
事件の起きた部屋の住人がそっと入れ替わっていたのは、実はその部屋が“不動産競売”にかけられていたのが原因でした。
住宅ローンが支払えなくなった場合に起こります。裁判所が差し押さえ、強制的に不動産を売却することです。
もっと大雑把に言うと、住宅ローンが支払えなくなった物件が法的にオークションに出されてしまうというイメージです。
競売物件は一般物件に比べて正規っぽさに欠けるため(なんて言ったら怒られるでしょうか)、なじみの無かった当時は買受人が執行妨害を受けることも多かったのだとか。
・・・とまあ事件の背景になっていた不動産競売については、初心者にも分かるくらい丁寧に解説されています。
法律音痴で家を買ったことも無い私の知識レベルでも理解できましたし、すごく参考になりました!!🤓
(逆に言えば、前提知識がある人は「長ったらしくて嫌だ」と感じるかもですけれど)
不動産競売の現状はバブル崩壊直後と比べてどうなったんだろ?と気になってネットで調べてみましたが、ストーリー中で指摘されていた問題点は今でもあまり解決していないっぽいですね。残念です💦
デマの誕生の仕方や広がり方もリアルに描かれている
この荒川区の異例の殺人事件の真実が少しずつ判明していくに従い、様々なデマが発生しています。
デマの内容は、時には推測だったり、時には思いつきだったり・・・
世間の注目を集めるために嘘の証言をしたと思われる事件の目撃者が姿を消すという、不可解なことも起こっていました(結局この人の行方は最後まで明かされませんでした)
作り話は波及して周囲に共鳴者を生み、また別のストーリーへとふくらんでゆく。
↑時代を問わず使える言い回しですね。
「マスコミは信用できない」という注意喚起もすごく説得力がありました。さすが宮部先生!
オーディブルだと聴き放題対象
「理由」はKindle版がないのになぜかオーディブル版はあるというΣ(・ω・ノ)ノ!
聞き放題対象(2022年5月現在)なのが嬉しいです!!✨
ですが、話がごちゃごちゃしている章もあるので、音声だけで小説全体を理解するのはほぼ無理かと思います。
一回読んだことがある人がもう一度読む代わりに聴く分には楽しめそうです💡
↑宮部みゆき作品は短編ホラーなら音で聴いて理解できる作品が多いです。中でも「ばんば憑き」は特に楽しかったですよ♪
映画版もあり
最近知ったのですが、2004年に公開されたそうです。
私は小説版を読んでから映画版をU-NEXTで見ました。見放題対象になっています(※2)
内容はさすがに少しはしょってありますが、ほとんど小説と同じです。
インタビュー形式の小説の1コマ1コマが忠実に再現されていて感動しました(´>ω<`)!!
ただ、映画版も小説を一度読んだことが無いと理解するのが難しいかな・・・と正直思います💦
映像だとどのシーンが本筋でどのシーンが枝葉なのかが分かりにくかったので、文字の解説などがあれば良かったかもですね。
でも映像の中に昔の荒川区の雰囲気が良く出てるし、キャストはちょい役で10代の頃の多部未華子さんや宮崎あおいさんがいて可愛かったし、見て良かったです😃
なお、U-NEXT以外ではhuluでも見放題対象(※3)になっています。
ちなみにエンディングは夢に出てきそうなくらい恐いので、お子様と見る際にはお気を付け下さい(;´・ω・)
「理由」を読んでますます宮部みゆき作品ファンになったオタク女から、最後に
以上。
私の想像していたミステリーとはいい意味で全然違う、新感覚作品でした。
「誰が犯人か」よりも「誰が殺されたのか」が気になって一気に読み進めちゃいました!
サスペンス劇場で見るような盛り上がるシーンが特に無く、どんでん返しも無かったのに、読み応えありすぎでしたね✨
不動産の社会問題と殺人事件の絡み合いも自然で、すごく面白かったです!
ので、社会問題を「副業ブームの闇」に差し替えた殺人事件小説(つまり、理由の2020年代バージョン)も書いてくれないかな・・・と密かに期待しています😁
それでは、ごきげんよう💖